黒執事

□第1話
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ロンドンから少し離れ

霧けぶる森を抜けると

手入れの行き届いた

屋敷があらわれた




【Primo】
"To be , or not to be"
何を掴み、何を失うか、貴方達に問おう。
(シェイクスピア「ハムレット」)




『やっと着いた…ていうか、遠いんだけど。僕を此処に寄越すなんて"あの人"も何考えてんだか…』


それにしても綺麗な屋敷だな…


庭の白薔薇に傷んでるのが1つもない


流石は名門貴族ファントムハイヴ家、ってか。


そんなことを思いながら僕は両腰のホルスターに手を伸ばす


その先には左に白、右に黒の拳銃が一丁ずつ…計二丁ある


『さぁて、遊びの時間だ』


きっと今の僕は不敵に口角を吊り上げているに違いない


自分でもわかるほどにしてるなんて…はたから見たらだいぶ不審者だろうなぁ


そう思いつつ、黒のローブを翻し庭を気配もなく駆けた


「本日は朝食後、帝王学の権威ユーグ教授がお見えです。ご昼食後はー」


ーガッシャアァン


僕は目当ての人物がいる部屋の窓を蹴破って入った


「っ誰だコイツは?」


小さな主人が面倒そうに怪訝な表情を浮かべる


その前には彼を守るように黒い執事が立っている


「さぁ…?私は存じ上げませんが…あちらの方も名乗る気はないようですね」


初対面だから知らないのは当たり前


仮に知り合いでもフードかぶってるから口元しか見えてないし、わからないだろう


「朝から騒々しい…セバスチャン命令だ、侵入者を始末しろ」


「イエス、マイロード」


命令もでたみたいだし、そろそろ始めよっかな


ードゴォッ


早速、僕は上段回し蹴りを繰り出す…が、避けられた


執事も僕に蹴りを繰り出してきたがそれを避ける


そしてそのまま執事に左下から殴りかかる


しかし執事はそれをぎりぎりで避け、横なぎに殴りかかってくる



それを避ける為にしゃがんで執事の足元に滑り込む


「なっ…!セバスチャンと互角、だと…!?」


伯爵が言う通り執事と僕は互角だった


僕は右手をついて上半身を起こした状態で左手の銃を執事の喉元に向けている


それと同時に…


執事も僕が殴りかかった際に避けながら抜き取った銃を僕の額に向けている


どちらも引き金をひかれた瞬間この世とサヨナラだ


「お強いですね…失礼ですが、貴方何者です?」


警戒したままで執事は僕を問い詰める


その有無を言わせぬ紅い瞳が僕を射抜く


そんな彼に僕はニヤリと口元を吊り上げ立ち上がってフードをはずす


『あー、楽しかった!久しぶりに手応えがあったな…執事さん強いんだね。


えっと…僕の名前はヴァルツ、キミ等に会いにきたんだ』


"あの人"からの御使いだからな


「会いにきた、だと…?」


うーわっ、めちゃめちゃ怪しまれてんじゃん


それに、フードを外して見えた僕の外見にも関係あるかな…?


茶髪でも金髪でもないミルクティー色の髪に、


左眼が紅で右眼が青のオッドアイ


髪色も眼の色も滅多に見ない色だし、オッドアイなんて尚更だ


執事は紅茶色の暗めな紅だけど僕のは両眼共に透きとおるような明るい色だしね


「それでは私の質問に答えれていませんよ。私は貴方は何者かと聞いているんです」


ですよねー…


名前と此処に来た動機(一部のみ)しか言ってないもんな


『手厳しいな…


改めて僕の名前はヴァルツ。殺し屋をやってるんだ』


笑顔で告げる僕とは裏腹に伯爵の顔が狂気に歪む


「…僕を殺しにきたのか」


あれ…勘違いされてね?


確かにファントムハイヴ家は悪の貴族と呼ばれるだけあって裏世界の住人だ


当然いろんな奴から恨みかってるだろうし、あの"悲劇"の件もあるからね


『や、確かに依頼されたらなんでもやるけどキミに不利な事はしない主義なんだ


それに、今回は別の依頼だよ。キミ宛てに手紙を預かってきてる』


「手紙、だと…?」


2人共めっちゃ疑ってるー!!


『まぁまぁ…とりあえず朝食食べない?僕お腹空いてるんだ。


話は食べながらでも…ね』


「時間も押していることですしそうしましょう。あちらに敵意はないようですし」


執事がそう提案すると伯爵は少し考えるとその提案を呑んで僕の分の朝食も準備するよう命令した


いやー、優しいね!


てかさ…


『僕の銃返してくれない?』


すると執事はニッコリ笑って


「これは失礼しました。コレ、お返ししますね。とても良い物を使っておられるようで」


そう言って手渡されたそれを受け取りながら返事をする


『ありがと…お気に入りだからね。仕事道具に良い物を使うのは当然だよ』


そう言って僕はそいつから離れ伯爵の横に並んで部屋をでた
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