黒執事

□第5話
1ページ/5ページ


*セバスチャンside*


執事の朝は早い


夜は誰よりも遅く仕事を終え、


朝は誰よりも早く仕事を始める


それが屋敷を一切仕切る執事の勤めである


「随分髪が伸びてきましたねぇ…勝手に縮めてはいけないんでした


人間というのはどうにも面倒だ」


「さて、参りますか」




【secondo】
"There are more things in heaven and earth,Than are dream of in your philosophy."
この天と地のあいだには哲学など思いもよらぬことがあるのだ
(シェイクスピア「ハムレット」)




まず始めに使用人に一日の仕事の指示をだす


「お早うございます皆さん、そろそろ始業時間ですよ」


「「おはようございまーす」」
「ウィース」


「メイリンはリネンの整備を、フィニは庭の木の手入れを


バルドは昼食の準備をお願いします。タナカさんはお茶でも飲んでて下さい」


「さ、分かったら早く持ち場へ行きなさい!ボサッとしない!」


使用人達を送りだしたら次は当主と客人(居候)の起床に備えて、


目覚めの紅茶と朝食の準備を


コンコンッ…


「失礼します。坊ちゃんお早うございます、お目覚めの時間です」


シャッ…


「おや、ヴァルツ様もこちらでしたか、お早うございます


本日は良いお天気ですよ」


「『んー…まぶしい…』」


我が屋敷の主人シエル・ファントムハイヴ伯爵


彼は12歳にして広大な領地を治める当主である


それと同時に玩具・製菓メーカー「ファントム社」の社長としての顔も持ち、


狡賢い…もとい才能溢れる経営方法で


あっという間に「ファントム社」を巨大企業に成長させた


「くぁっ……ってわぁっΣ」


ボスンッ…


『んんっ…アッサムの良い香りだね』


「っおい、ヴァルツ!!」


『ふぁ…いいじゃん、もーちょっと…』


「流石でございますね、ヴァルツ様。
アッサムで良い茶葉が仕上がったと耳に挟みましたので現地から取り寄せました


ですが坊ちゃんを巻き込んで寝ようとしないでください。
昨夜のお仕事はなかったのでしょう?」


坊ちゃんを抱き締めて二度寝しようとなさっているのが客人という名の居候・ヴァルツ様


殺し屋をやっている彼は悪魔の私と張り合える人間離れした実力と才能を持っており


「女王の愛猫」と呼ばれ番犬の坊ちゃんと同じような立場にいらっしゃる…らしい


そして仕事のない日は坊ちゃんの寝室で一緒に寝ていらっしゃる


仕事のある日は深夜に返り血塗れで帰宅なさるので坊ちゃんに気をつかってらっしゃるのでしょう


『ちっ…しょーがないな…』


ちなみに低血圧で寝起きが悪く、目覚めてから暫くはベッドの上で寝転がったまま動かない


そんな彼を横目に見て開放された坊ちゃんに紅茶と新聞を手渡す


バサッ…


「そういえばバートン伯の養護院の子供達を屋敷に招くことになった」


貴族の富は社会に貢献する為にある


その有り余る財を使い民に施しを行うのだ


名門たるファントムハイヴ家も例外なく社会への奉仕活動を行っている


「それは良いお考えですね。いつになさるのです?」


「明日。(即答)」


明日?(笑顔で石化)


このガk…坊ちゃん


私にまかせておけば何でもかんでも何とかなると思ってませんか?


『ぁー…親になにか買わせたいなら子供からって言うもんねー…』


おまe…ヴァルツ様も気安くそのようなことを…


いい加減人(?)使いが荒すぎます


「了解致しました。どんな小さなお客様にも最高のおもてなしを」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ