黒執事

□第16話
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セバスチャンとアグニの勝負はとにかくすごかった


それこそ息をするのも忘れて見入るくらい


それは僕だけじゃなくて、シエルも、ソーマも、劉も同じだった


ーキィ…ン


「やれやれ、剣が折れてしまった」


セバスチャンの声にハッとして意識を取り戻す


これでは続きは出来ないだろう


「シエルの執事もなかなかやるな。アグニと互角に戦えた奴は初めてだ!」


アグニ達はなんてことないように言っているが僕等には違う


『あのセバスチャンと互角に戦える人間がいるとは思わなかったよ』


悪魔のセバスチャンと互角にやりあう人間などいるのか


シエルも横で呆然としている


「気に入った!シエルの執事よ、お前の腕に免じて今日は勘弁してやる」


「光栄に存じます」


僕等の前ではソーマとアグニがセバスチャンと話している


『……良かったね。今日は諦めてくれるってさ』


シエルはなんともいえないような顔をしてそれを見ていた


「ヴァルツ様、先程は申し訳ありませんでした。まだ痛みますか?」


セバスチャンとの話を終えたアグニが僕に謝罪をいれる


大きな身体を縮こまらせて申し訳なさそうにする姿に思わず笑みがもれた


『いや、大丈夫。僕の方こそ反撃しようとしちゃって…』


「そんな!気にしないでください。ヴァルツ様にお怪我がなくて安心しました!」


ころころと表情が変わる彼がまるで犬のように見えてきた…


これが人外とは思えないな


「セバスチャン、あの男は一体何者だ?まさかまた…」


アグニがソーマの元へと行ったのを見計らいシエルが尋ねる


「いえ、あの方は人間ですよ」


その言葉にはっきりと安堵の表情を見せるシエル


『よかったねー。また死神とかならどう考えても面倒だったもんね!』


「なっ…やめろ!」


シエルの髪をわしゃわしゃと撫で回したら怒られた。解せぬ。


そのまま彼はソーマに連れられ僕等の元を離れる。


「そう…ただの人間です。私達が持ちえぬ力を持った、ね」


『……え?』


シエルの方へと向けていた足を戻す


振り向いてもセバスチャンはにっこりと微笑むだけで何も言ってはくれなかった


『(聞き間違い…?)』
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