黒執事

□第17話
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腕の中にあるぬくもりに安心感を覚える


手放したくなくて、もっと近づきたくて抱きしめる力を少し強くする


「ん……」


まだ目が覚めきっていないのかもぞもぞと動くだけで抵抗しないシエルに口元が緩まる


「そのようにしていらっしゃると年相応ですね」


クス、という小さな笑い声と共にそんな声が聞こえた瞬間


「っセバスチャン!?いや、これはこいつが勝手に…!


というか黙って部屋に入るな!」


シエルが騒ぎだした


「入る時に声はかけていましたよ。それに気づかないほど気を緩めてらっしゃったのでしょう?」


「…っくそ!もういい、こいつをなんとかしろ!」


さっきまで大人しかったのに暴れ出す始末


「まったく…起きていらっしゃるのでしょう?ヴァルツ様」


もう少し寝ていたかったのに残念


『折角可愛いシエルと朝の微睡みを楽しんでたのに…』


「貴様…起きていたのか…っ」


顔を俯かせたシエルは肩を震わせたかと思うと


『いっ…た!?』


頭突きを食らわせてきやがった


緩んだ腕からさっさとシエルは抜け出し、新聞を読み始めた


頭突きをくらった額は痛むけれどシエルも少し涙目で可愛かったので流すことにした


未だに寝転んだままの僕の瞳には斜め下から見た彼の横顔が映り込む


寝起きで少し寝癖のついたブルネットの髪


『……ヴィン………』


「結局あいつらいつ戻ってきたんだ?」


わかるか?と言いながらこちらに顔を向けるシエルにハッとする


気配に敏感な僕なら分かると思って聞いてきたのだろう


『え?あぁ…午前1時過ぎくらいかな。ただ……』


無意識とはいえ、シエルにヴィンを重ねてしまったことに


ヴィンをまだ求めていることに


感じた気持ちに蓋をして。
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