黒執事

□第7話
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それから適当に歩いていると子爵とシエルの姿を見つけた


…が、シエルは声だけかけて走り去っていった


大方リジーから逃げているのだろう


「………?」


子爵は不思議そうに自分の後ろ、さっきシエルが居た場所を見ていた


どこかに行かれても面倒だし、先に接触しておくか


『…そのような虚空を見つめられて…ドルイット子爵の目には妖精でもお見えになるのかしら?


できれば私も貴方の目に見留められたいのですけれど』


そう言って近づくと彼はすぐに反応した


すべての表情筋を駆使して微笑みを作り続ける


「おぉ…!これは美しい。確かに私には妖精が見えるようだ…貴女という、ね」


ぞわっ…


これ以上ないほどに寒気が身体中を襲う


コイツ頭おかしいって!僕が妖精とか…口説でも信じられない


しかも手の甲にキスした!挨拶でしてくる奴久しぶりに見たよ!


『私が?面白いことを仰るんですね。では子爵の目に私はなんの妖精として映っているのかしら?』


どんなに嫌でもこう言うのは笑顔で話に乗るのが極意


「その雪のような肌に映える赤いドレス…まるで薔薇の花の妖精。


安易に触れればその棘で刺されてしまう強気な女性。しかしそれすらも貴女を惹きたたせる…!」


っ……!


薔薇の花、か…


『薔薇では子爵に触れていただけないのですね。私の棘で貴方の手を傷つけてしまいますわ』


「貴女のような美しい方の棘なら喜んで刺されましょう!私は貴女のすべてを包みこみ受け入れてみせましょう」


そう言って僕の腰に手を回し自分の方へと引き寄せる


『っドルイット子爵はお話に聞いていた以上に素敵な方ですわ』


顔 が 近 い !


「私のことを知っているのかい?そう言えば本日は誰といらしたのかな?美しき妖精さん」


『アンジェリーナ叔母様に。妹も来ているの。


ほら、あそこで踊っているのがそうですわ』


「へぇ…」


子爵がシエルを目に留めたと同時にダンスが終わった


彼は僕をシエルの元にエスコートする


「駒鳥のように可愛らしいダンスでしたよ、お嬢さん」


「えっと…お褒めいただき光栄ですわ」


セバスチャンは邪魔にならないようにとすぐに側を離れる


「彼女の妹だそうだね。姉妹揃ってキレイだ。


パーティーは楽しんで頂けてるかな?」


そう言って彼はシエルの手の甲にキスを落とした


それに対して鳥肌をたたせながらシエルはさりげなく手をふく


「素敵なパーティーに感動しています…でも、私ずっと子爵とお話したかったの」


うわぁ…シエルすごい可愛い


マダムの特訓が見事に身についてるや


「もっと楽しいことをご所望かい?」


ふと2人を見ると子爵がシエルの腰に手を回していた


この数十秒ですごい接近ぶりだ


『子爵はご存知なのかしら?もっと楽しいこと…』


遠い目をしているシエルに変わって会話を続ける


「もちろん。君たちになら教えてあげるよ」


「楽しいこと?とっても興味ありますわ」


もうすぐダンスが終わる


早くしないとリジーが来るな
(※さっきからすごい視線)


「お姉さんはまだしも…君には少し早いかもしれないよ」


あ、僕はいいんだ


「あら、お姉様ばかり特別視しないで。私もう一人前のレディなんですのよ」


やばい、ダンスが終わった!


「マダムに内緒にできる?」


このままだとリジーが来る


「もちろん、できます…わ!」


もったいぶるな!早くしろよ!


『ドルイット子爵、私たち貴方に会いたくて来ましたの。もっと楽しいこと…貴方の手で教えて頂きたいわ』


そう言いながら子爵の腕に自分の腕を絡ませる


「『だから…ね?』」


僕たちは同時にそれぞれアピールする


シエルは小首をかしげてきゃるるん、と可愛らしさを武器に


僕は絡ませた腕をそのままに顔を近づけて妖艶に微笑み色っぽさをだす


「わかったよ…我儘なお姫様たちだ」


そうすれば、堕ちない男はいない


「奥へどうぞ」


その言葉とともにカーテンに隠された扉が開かれる


僕とシエルは覚悟を決めてその奥へと足を踏み入れた
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