伝説の戦士達と魔王のまとめ

□第一話
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夜闇の森のなか、少女は逃げていた。
何度も木の根に足を取られるが、決して止まる訳にはいかなかった。
肩越しに背後をかえり見れば、闇色の獣達が迫ってきている。

闇は、魔王に通じる。
黒は、魔の色だ。
小さな頃から聞かされた、魔王と勇者の伝説にそうある。
ならば、あの獣は魔王の遣いだ。
捕まったらきっと殺されてしまう。
お母さんに、夜は森に行ったら駄目だて言われてたのに。
大丈夫だと思って来てしまった私がばかだった。

とにかく逃げなければならない。
捕まってはならない。

逃げなければと思うのに、足がうまく動かない。

少女の脳裏に、伝説の一節が甦った。
―この世に魔王現れる時、勇者もまた現れる―

びたんっ!!

「痛っ…」
少女は豪快に転んでしまった。

足を木の根に引っかけてしまったんだ…。
膝が痛い。
血が出てる。

辺りを見回せば、予想より遥かに近い場所に獣達がいる。
獣は示し合わせたように、少女に飛び掛かった。

勇者様勇者様勇者様、居るなら、
「居るなら助けて、勇者様ー!!」

ザァン…

固く目をつぶった少女は、いつまでも襲ってこない痛みを不思議に思って目を開けた。
なんと辺り一面に雪が積もっている。

「みんなーこの子大丈夫みたーい」

能天気な声が、目の前から聞こえた。
そろそろと視線を上に向ければ、闇に映える白い服の女の子がいた。
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