恋次
□恋次誕生日/2011
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「徹夜とか有り得ねぇだろ―…」
あの後
朽木隊長にこってり絞られた俺は、まだ終わっていない書類に加え大量の書類の処理をされる嵌めになった。
そのせいで今日は非番だっつーのに、徹夜してたもんだから家へ朝帰りだコノヤロー。
『恋次!!』
やけくそになりながら荷物を引っつかんで執務室から出ると、聞き慣れた声が聞こえた。
まだ誰も来てねぇ隊舎に桜子の声が響いていく。
「おぅ。…何持ってんだ?」
『あのね!!誕生日おめでとう!!』
ドスドスと重い足を上げ、ゆっくりと近寄ると、左手の包みが目に入ったもんだから、とりあえず尋ねる。
すると、ニコッと笑う桜子。
仕事のしすぎで、言われた言葉に頭がイマイチついていかない俺は、一度動きを止め、今日の日付を頭の中で確認する。
「そういや…俺誕生日だったな。」
『え?忘れてたの?』
ポンッと思い出したように手を叩くと、キョトンと首を傾げた桜子が俺を見上げた。
「まぁな…、桜子はなんか隠し事してやかるし、隊長には怒られるしで、んなこと覚えてる暇なかったからな。」
『アハハ…あのね、ずっとこれ作ってたの!!』
すこし嫌みも込めて言ってやる。
桜子のことばっかで、自分のことなんか全然忘れてたんだよ、俺は。
なんて思っていると、パッと桜子が包みの中から何かを取り出した。
「これ…椿…お前が作ったのか?」
手渡されたのは、黒地に椿の刺繍が施された額あてだった。
赤と金の糸で細やかに刺繍された椿は、まるで本物のように綺麗で、売り物かと見間違うほどの出来栄えだった。
『うん!!中々のもんでしょ♪』
「巻いていいか?」
『もちろん!!』
コクリと頷いた桜子は嬉しそうに笑った。
だから、手が絆創膏だらけだったんだな。
キュッと巻いた額あては、しかりしていて、俺の頭にとてもしっくりきた。
『あのね、身につけられるものあげたくてさ。
だったら、ルキアが手ぬぐいがいいんじゃないかって言ってくれてね。
いつも、恋次がつけてるから、いつも恋次の側にいるような気持ちになれるかなぁって。』
「ありがとうな。似合うか?」
俺が手額あてを着ける間
楽しそうに話す桜子に俺は笑いかけながら、グッと引き寄せた。
俺が着けた手ぬぐいと、俺の顔がよく見えるように顔を近づける。
『当たり前だよ。』
桜子は優しく笑うと、少し背伸びして、チュッと俺の頬に口づけした。
いつも いつまでも
ただ 君の傍らに
HAPPY BIRTHDAY
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