宝物

□恋愛日和。
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ぼんやりと目を開ければそこには白い天井。
夢の中気分でいた私はここどこだっけ、なんて馬鹿なことを考えてしまった。


寝返りをうって、正気に戻るまでは。



『修、兵……』



名前を呼んでしまって思わず口に手を当てる。
幸い彼はまだ夢の中にいるようで起きる気配は全くない。

ほっと息をつきつつ、私が仰向けで寝ていたのに対し修兵は横向きで寝ていたのに気付いた。
それはつまり……その、私が寝ているのを横で見ていたということで。

カアッと羞恥心で一気に顔が熱くなった。


いつもそうだけど…修兵は私が寝るまで必ず起きていてくれる。
副隊長という立場上疲れているのは明白なのに、優先されるのは全部私のほう。

以前、かなり遅い時間になってから『何で寝ないの?』と聞いたことがある。
修兵は嬉しそうに笑って



「名無しさんの寝顔が見たいから」



…なんて爆弾発言をしていた。
ホント女たらしっていうか慣れているっていうか。


朝の時も何故か私が起きる前に修兵は起きている。理由は、さっきと同じ。
最初は、寝顔を見られているのを感じて中々眠れなかった。
そんな私に「寝させてやろうか?」と意地悪く言ったのがこの人。

…まぁお陰様で寝れたことは寝れたけど。
それで私達は…一線を越えてしまったわけで。



でも修兵が寝ているのを見たのは久しぶりだ。
普段の日常で昼休みには膝を貸してたけど、ここ最近は忙しくてそんな暇もなかった。


向きを変えて修兵の顔を見る。
相変わらずというか女の私より色気あるんじゃないかってくらいだ。ずるい、羨ましい。


それにしても本当に無防備に寝ている。
さすがに三日間連続徹夜じゃ、疲れてるのも当たり前か。

寝ている修兵の顔は凄く穏やかで、いつも眉間に皺寄せて仕事をやっている人なんて分からないほど。



『……修兵、大好きだよ』



いつもなら恥ずかしくて言えない言葉。
本人はどうせ寝ているんだし、聞こえてないだろう。


小さく笑った後、さて今は何時だろうかと起き上がろうとした瞬間。



思いっきり腰を引かれ、再びベッドへと戻ってしまった。




…誰か、なんて見なくても明白だけれど。



『しゅ、修兵……』

「はよ、名無しさん。…朝から随分と大胆だな」



薄く笑っている。ということは起きていてわざと寝ている振りをしていたのか。

抱き締める力が強くて逃れられない。
自分の言っていたことがどれだけ恥ずかしかったか。羞恥心でもう顔を合わせられない。



「名無しさん、顔真っ赤」

『う、煩い……見ないで、よ…』

「無理だな…可愛すぎる彼女をほっとけねぇよ」



ふっと笑った修兵はそのまま私の肩に頭を押し付けた。
修兵の髪が首に当たって思わず身じろぎしてしまう。
さっきよりも抱き締める力が少し強くなった。



『ちょ、ちょっと修兵、今日仕事は?』

「んー……別にいいじゃねぇか。名無しさん暖けぇし、もう少しこのままでいてぇもん」

『あ、あの、ねぇ……』



もん、って。まるで子供の駄々っ子だ。
この人ホントに九番隊を仕切る副隊長?


けど、私に促す権利なんてない。
修兵がそうしたいなら、私はその通りにさせてあげるべきだ。
何よりも…私自身、このままでいたいって思うから。



『……朝ご飯、遅くなっちゃうよ』

「別にいいって。いざとなったら休む」

『え…そ、それはさすがにマズイって。九番隊の人も困るだろうし』

「俺は名無しさんと一緒に過ごせればそれでいいんだよ」



他の奴らなんか知るか。楽しそうに呟く修兵は悪戯をする子供のようで。
しょうがないな、と思う私もそんな彼に相当溺れている証拠。






恋愛日和。
(どうせ休むなら今のうちにヤっとこうか?)(し、仕事行きなさいっ)



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