黒子のバスケ

□大きな手
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公式戦だぞ!!

ふざけてるのか!?

馬鹿にしてるのか!?



殴りつけられるような怒声に、その場では泣くものかと手を握りしめていた。

間違ったことはしていないし、手を抜いたつもりもなかった。



力が及びませんでした



キッパリ答えると、再び激しい言葉が刺すように次々と飛ばされる。

ミーティングが終わり、部室で着替えながらも“泣くな”と唇を噛んでいた。

同級生から励ましの言葉をもらった。

その間も必死に涙を堪えていた私の手は、微かに血が滲んでいた。



中学校と高校のレベルの違いに圧倒された



試合に負けたことも、力が足りなかったことも悔しかった。





『負けた…。』



完璧に自分の力が足りていなかった



一人になった体育館裏で、堪えるようにいつの間にか座り込んで唇を引き結んでいた。

膝を抱いて、身を縮めて、回りから隠れるように。



バサッ…!!



突然聞こえた音に少し顔を上げると、目の前が真っ白になっていた。

それがタオルであることを認識するにはあまり時間はかからなかった。



目の前に人の気配がする



私は不思議とそれを怖いとは思わなかった。



ポスッ…



タオルの上から手の平が乗せられる。

大きなその手は多分男の人のものだ。

まるで“泣いてもいいんだ”と言っているように、その手は優しくポンポンと私の頭を撫でた。






『…っ…』





それまで堪えていた涙はたったそれだけの出来事で簡単に崩壊していた。

しゃくりあげる度に、大丈夫だと頭を撫でられる。

頭を撫でてくれている人の顔は、タオルでわからなかった。

だけど、なんとなく安心できた。



大きな、大きな手だった






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