恋次
□夏と言えば花火大会
2ページ/6ページ
一人になってから待つこと30分。
携帯の着メロが鳴る。
通話ボタンを押すと、興奮したような友達の声と、その後ろでは聞いたことのある男の声がした。
『へぇ…、檜佐木さんと見るんだ?わかった、気にしないで。』
桜子は携帯から声が遠ざかったのを確認して、ピッと電話を切った。
花火開始5分前の放送が、近くの柱に括り付けられたスピーカーから流れる。
『少しは気にしなよ。ったく。』
閉じた携帯を恨めしそうに睨むと、そこには眉間にシワを寄せた自分の姿が写った。
周りを見ればカップルだの友達同士だのと楽しそうに、花火の上る前の夜空を見上げる人々の姿が目に入る。
一人、淋しく座るのは自分だけではないか。
パタパタと団扇で顔を扇ぎつつ、桜子は小さくため息をついた。