修兵

□一人じゃないから
1ページ/1ページ






わがままを言ってごめんなさい





「元気、でた、かッ…?」

『ごめんね…修兵…。』





ゼェゼェと息をする彼を目一杯抱きしめた。

新しい環境、沢山の勉強、人間関係、周りを見て感じる劣等感。

一人でいるのは辛くて寂しくて、貴方を頼ってしまった。





「梓が…、笑ってくれんなら、いい。」





修兵だって忙しい。

きっと彼は私より忙しいのに。

彼は少し笑って、私の頭にポンッと大きな手を置いた。

たった二週間離れていただけなのに、貴方に会いたくて寂しくてたまらなかった。

沢山の不安を取り除いて欲しかった。





『ありがとう…修兵。』





暖かい彼の手を、自分の頬へと引き寄せた。











電話口でポツリと呟いただけだった。



寂しい



それを聞いた彼は途端に電話の向こうでバタバタと動き始めた。



会いに行ってやる



そこで電話は切れて、1時間くらいしてから黒いスポーツカーがアパートの目の前に止まっていた。

会いに来るなんて思ってもみなかった私はベランダから呆然とその車を見つめていた。

気づくと部屋のインターホンが鳴った後だった。










「梓…。」





暖かい彼の手が、ゆっくりと私の頬を包み込む。

額をお互いに引っ付けて、目を合わせてクスリと笑った。





「俺だって、寂しいんだよ。」





やがて重なる唇。

二週間ぶりのはずなのに、もう何年も触れていないような感覚だった。





「『大好き。』」










大丈夫

一人じゃないよ

いつでも君と僕は

赤い糸より強い絆で

繋がっているのだから










End.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ