修兵

□私だけに
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その優しい眼差しが
私だけに向けられていればいいと思う





「次からは気をつけろよ。」

「はい、ありがとうございました。檜佐木副隊長。」





そう考えている自分は、凄く汚いと気づいた。


書類を届けに九番隊へ向かうと、ちょうど部下と話をしている修兵を見つけた。

それだけで、胸がザワつく…イライラしてしまう。





ガツンッ!!


『あ、やば…。』





あぁー、無意識に壁殴っちゃった…

しかも白壁、修繕費高いだろうな…

アハハ…






若干ヒビの入った目の前の壁を見て、ため息をつく。


男勝りで、暴力的で…
こんな自分を修兵が特別扱いしてくれる時点で奇跡なのだ、幸せ者なのだ。

恋人であることが奇跡にも関わらず、嫉妬している自分はどれだけ欲張りなのだろう。


「ハァ」ともう一度ため息をつく。






「何してんだよ。」


『Σあわ…』





すると後ろからスルッと腕が伸びてきて、私は後ろに倒れるような形で抱きしめられた。

よく知った香りが、肺一杯に広がる。





「ヤキモチは大歓迎だけどよ、修繕費はださねぇからな。」





聞き慣れた優しい声が、耳元で聞こえる。

すこし困ったような声。


彼は、長い指の大きな手を私の右手にそっと重ねた。





『やっぱり…?』

「当たり前だ。」





「アハハ」とごまかすように笑うと、修兵は少し赤くなった私の右手を摩る。





「ちゃんと、お前だけが好きだ。な?」






優しいのだ。彼は本当に優しい。

だから、嫉妬してしまう。

欲張りになる。






『修兵はずるいな〜。』

「梓が大好きだからな。」






貴方がもっと欲しくなるよ。










こんな私でも

貴方の特別でいられるなら








End.
 

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