修兵
□側にいるから
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「梓…梓…ッ!!」
彼は私の首に顔を埋めて、泣きながらギュッと抱きしめた。
『はぁい、大丈夫、大丈夫。』
トントンとあやすように背中を叩く。
嗚咽を漏らす彼を見たのはいつぶりだろうか。
強くて、カッコ良くて、飄々としていた彼をこんなに壊してしまったのは、亡くなったあの人。
あの決戦。
“お前は隊を瀞霊廷を護れ”
一角の命令で瀞霊廷の守護についていた私は、帰ってきた一角や射場さんから沢山の事実を聞いた。
事の顛末から戦闘の内容。
破面、仮面の軍勢、隊長達の容態、そして亡くなっていった人達。
そして目にしたのは、私を見て泣き崩れる貴方の顔。
「一人に…しないでくれ…ッ!!梓…ッ!!」
泣きながら嗚咽を漏らす貴方は、まるで置き去りにされた子供のように、私の服を必死で掴む。
体が小さく震えていた。
壊れてしまったのだ。
戦いの中で何もかも。
体も、町も、戦士の心も。
目の前で隊長に裏切られ、目の前で隊長を殺され肉片にされ、皹の入っていた彼の心は、とうとう壊れてしまった。
『側にいるよ。大丈夫だよ。』
私が、貴方を支えなきゃ。
ゆっくりと大きな背中を摩る。
きっと彼はこの先も、この背中に沢山の物を背負って生きて行かなければならない。
泣く事さえ、許されない忙しい日々がまたやってくる。
貴方は責任感が強いから、余計。
副隊長だから、いつまでも引きずってはいられない、許されない。
だから、今は我慢しないで
せめて私の前だけでも、気持ちを吐き出してしまって
辛かったね、しんどかったね
「梓…梓ッ…ッ…!!」
『いるよ、ここにいるよ、ずっと修兵のそばにいるよ。』
私は貴方の側にいるから
ずっとずっと
側にいるから
貴方の悲しみを辛さを
私に分けて
End.