修兵
□安眠
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雨が窓硝子を叩く音がする。
風が建物を揺らす音がする。
今日は何故だか、すごく寂しかったのだ。
暗い廊下を歩き、彼の部屋へと向かった。
キィと、扉を開けると彼の部屋は電気が消されて真っ暗になっている。
『修兵…?』
布団に潜ってしまっている彼の名前を呼んでみるが、反応はない。
それでも、今はあの一人の部屋には帰りたくなかった。
心の中に何か得体の知れないものがあって、自分ではどうすることもできない。
それを修兵に取り除いてほしくて。
私は、ゆっくり布団をめくりモゾモゾと、中へ入った。
布団潜り込んだ時、目の前にあったのは彼の大きな背中。
私はそこへピタリと引っ付き、息を深く吸った。
安心する香
優しい彼の匂いが、私の肺を一杯にする。
『あったかい…。』
何故だか泣きそうになって、額を彼の背中に押し付けた。
すると、今まで寝息を立てるだけだった彼の背中がモゾモゾと動きだし、クルリと反転したかと思うと、ギュウと彼の腕に抱きしめられた。
「どうした、梓。何かあったか?」
コツンと額がぶつかる。
『なんでも…ないよ。』
彼の言葉に私はフルフルと頭を降って、彼の胸に擦り寄る。
心臓の音、肺の呼吸する音。
修兵がそばにいる音がする。
『ただね、寂しかったの。』
ぽつり、と小さく言葉をこぼした。
聞き取れなかったのか、修兵は「ん?」と聞き返す。
『修兵といたかったの。』
「…そうか。」
今度は顔を見てハッキリと言った。
すると彼は嬉しそうに目を細めて、私の額にキスを落とした。
「無理すんなよ、梓。俺を頼れよ。」
『…うん。』
優しい彼の声に、心が軽くなっていく。
雨の音も、風の音も消えて
貴方の心臓と、呼吸音が私を満たす
「おやすみ…梓。」
『…おやすみなさい。』
貴方の腕の中で、私はゆっくりと目を閉じた。
貴方が傍にいるだけで
こんなにも安心できるの
End.