修兵
□Merry X'mas
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大変面白くない
修兵にたかる暇があるくらい他の隊務は楽な仕事ばかりなのか、と考えると余計に眉間にシワが寄る。
修兵は他隊の女の子達から、クリスマスに現世に行かないかという誘いが、ここ数日の間奴に引っ切りなしに来ている。
何故知っているのか、それは私が…
『檜佐木副隊長!!休憩時間は終わりです。さっさと仕事に戻ってください。』
「はいはい、わってる。梓。」
奇しくも修兵の部下だからだ。
幼なじみで、同期で部下。
なんとも微妙な立場の私は、修兵とは割と仲がいい。
そのせいか、檜佐木副隊長の休みを教えてくれと言う依頼が後を絶たない。
執務室の外に手を振る修兵。
そこから聞こえて来る黄色い叫び声に、私は耳を塞ぎたくなるのを堪え、変わりに手に持っていた書類を握り潰した。
こっちは休み返上で年末の仕事に追われているというのに!!
「そんなに怒るなよ、梓。」
『怒ってません。』
「嘘つけ。」
パタンと扉を閉め、彼は私の様子に気づいたのか少し呆れたように私を見つめてくる。
『外の金切り声に全力でイラついてるだけです。』
「怒ってんじゃねーかよ…。」
提出書類を机の上に乱暴に置くと、彼は一つため息を零して書類に目を通し始めた。
私は机につき、再び紙に筆を走らせる。
「あ、もしかして俺とクリスマス過ごしてーとか?なんだ嫉妬か。」
バキッと握っていた筆が折れたのは、きのせいではない。
アンタねぇ…
『副隊長って幸せな頭のつくりしてますね。あー羨ましい。』
厭味たっぷりに言ってのけると、修兵は不機嫌そうに顔をしかめた。
「なんだよその言い方。」
なんだよ、じゃないんだよ!!
私だってクリスマスは現世に行ってみたかった。
乱菊さんがくれた雑誌に載っていたクリスマスツリーやイルミネーションは、写真でみてもとても綺麗でこの目で見てみたいと思った。
『だいたい、クリスマスったって私仕事入ってますよ、残業つきで!!』
そう、当のクリスマスはイヴも当日も私は仕事に残業が入っていて出かけるどころではない。
修兵は、その言葉に思い出したようにハッと目を見開いてから申し訳なさそうな目で私を見た。
「そう…だったな、ワリィ。」
呆れたようにため息をつき引き出しから新しい筆を取り出した私に、修兵は申し訳なさそうに手をあげ、再び書類へと目を戻した。