修兵

□バイクの件
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そんなにイジケなくても…





『バイク乗り回して怒られたんだって?』

「…ッせ。」





例のバイクを瀞霊廷内で乗り回した件で、隊長の拳西さんに怒られたんだってさ


この副隊長様は


膝に頭を乗せて、拗ねたようにキュッと私の腰に回した腕の力を強くし、私に引っ付いてきた。


憧れの拳西さんに怒られたんだもんねー

そりゃヘコむわな


なんて考えながら、しがみついたまま離れない彼の髪を撫で、ついでに技局の書類に目を通す。

自分が非番だからってこの副隊長様は、恐ろしく沈んだ顔で技局にやってくるもんだから、私は阿近さんに研究の邪魔になる副隊長を連れ出す係に任命され、自分の研究室で簡単な書類整理することになった。

まぁ楽でいいんだけど、今日は機械の開発だったから機械いじりが好きな私としてはちょっと残念だったかな。






『まーだイジケてるの〜?』

「イジケてねぇ…。」





口ではそんな事をいいながら、顔をこっちに向けずに寝ているあたりからしてもうイジケてると思うのだが…

そんなことは口にださず、とりあえずは修兵の頭を撫で続けてみる。





『機嫌治せ〜修兵く〜ん。』

「くすぐってぇ。」

『機嫌なおった?』





試しにスリスリと額を擦り寄せてみると、修兵がこっちを見上げた。





「舌入れてキスしたらなおる。」

『ばーか。』





仕事中だと、今度は額にキスを落として鼻を摘んでやった。

そうすると、彼はムと唇をへの字に曲げてまたもや腰に腕を巻き付けて私のお腹あたりに顔を埋めてしまった。


まったく、まるで大きな子供





『そんなに怒られたのショックだったの?』

「別に…。」

『じゃ、なんで機嫌悪いの?』

「バイク…」






そっぽを向いてしまった修兵の髪を指でときながら、話し掛けると修兵がボソリと呟いた。





『ん?』

「バイクお前に見せたかった…」





そういえば私、珍しく外回りでウロウロしてたんだっけ


修兵がバイクを持って帰った日は、ちょうど阿近さんに外回りを頼まれて瀞霊廷中を駆け回っていた。





「お前機械好きだろ?前にカッコイイって言ってたから、見せたかった。」

『そっか、没収されちゃったしね〜。』





どうやら私に見せたくて、バイクで駆け回っていて怒られてしまったようだ。





「隊長にも怒られたし…。」

『…あはは。』






なんだか、そう考えると拗ねている修兵が可愛く見えてきた。






『バイクちゃんと見たよ修兵。』

「え?」

『修兵センスいいね、スッゴくカッコイイバイクだったね。』

「見たのか?」

『見たよ。私、機械好きなの知ってるでしょ?』





やっと私の顔を見上げた修兵にニッコリと笑いかけて、彼の頬に手を当てる。





『あのエンジン音が喧しいのは気に入らなかったけど。』





私の管理下の倉庫に保管してあるからと告げると、修兵は一瞬驚いた顔をした後、目を細めて笑った。





「そうか。」

『あれは現世で乗るほうが似合うから、今度現世に行って私を後ろに乗せて。』

「おう。」





修兵のバイクは本当にかっこよかったけど、あの機械は瀞霊廷には必要のないものだ。

現世で使ってこそ価値がある。





「梓。」

『何?』

「舌入れてちゅーしたい。」

『まだ言うか。』






体を起こして首に手を回して甘えてくる修兵に、私は顔を擦り寄せて甘いあまいキスをした。





「現世にデート行こうぜ。」

『いいね。』













こんどは

現世の町を

二人で走れるといいな









End.
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