長編
□第二十六訓 ガリ●リ君って最終的には崩れて床に落ちることが多い
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あたしは走って、逃げた。
追いつかれたら、今度こそ生きて帰れない。
あの男の助けを無駄にするわけにはいかないもんね…。
それに
…また子もか。
また子……。
あんたとはまた違う形で出会いたかったな。
口の中が切れて、血の味がした。
それでもあたしは…走る…!
***
祭りの提灯が見えてきた。
人ごみの中のちらほらといる見なれた隊服が目に入った途端、安心と疲労でその場にへたりこんでしまった。
「…葉月…葉月…!」
はっと気付く。
この声って…
総悟!!と叫びだしたくなるのをぐっとこらえた。
今回のことは、総悟達には関係ない。
あたし個人のことだし。
あたしはいつもどおりに言った。
「あ〜総悟〜」
「探したぜィ!アンタ、どこほっつきあるいてやがった!!…高杉も紛れ込んでたらしいし、危ねーじゃねえか!」
「ごめんごめん、大丈夫だから!」
…そう、大丈夫だから。
「…っ。」
総悟はあたしの真意を器用にも読みとって、気を使ってくれたのか。
はたまた素直にあたしの言葉を信じたのか。
葉月にはわからないまま、総悟は言った。
「…帰るぜィ。」
「うん」
2人は並んで歩きだした。
「あ、そーだ。これ、くれてやってもいいぜィ?」
「なに…?ん?金魚?」
手にしていたのは金魚。
しかも半端ない量!!
この狭いビニールにこの量はかわいそ過ぎるだろ!
アンタ、魚類に対してもSか!
「チャイナと競ってたら意外に持て余す量とれちまってねえ。へい。」
「ありがたくもらっとく…。」
…屯所に戻ったら水槽探して移し替えよ。