長編

□第三十一訓 女は雨に濡れたい時もある
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「あーあ、せっかく会えたのに泣いてる最中とはね、ついてないや」





傘をくるくるっと回す。




水滴が飛び散る。








「さて、行ってくるか。あとは…頼んだよ。










…阿武兎?」









****



誰かが背後に立ち、あたしの上に傘をかざしてくれた。




(親切な人もいるんだね…でも今はお礼言えるような余裕ないや…。)





あたしが顔をあげると、傘の持ち主はにこにこと笑っている。




「…どうも…」





前にどこかで会ったような気がした。





「いいんだよ。…でさ、君、今暇?」






「…暇に見えますか。」





泣き顔のあたしに何を言うんだ。



「泣きたいときは、気分を変えるのが一番だよ。行こ?…ちょっと歩こうよ」




あたしは黙ってその人についていった。






…。この感じ。







前にもこんな気持ちの時に、この人…。







「そうそう、前にもこんな感じだったよね、君」






あたしの心を読んでいるかのようだ。






「…俺は神威。…妹を知ってるんじゃないかい?」




「妹さん…」




「そう。『カグラ』って言うんだけど」




「神楽ちゃん!?…あなた…」



「そうそう。…ま、もう関係ないんだけどね」





神楽ちゃんとは何度も遊んだけど、一言も兄がいるなんて言ってなかった。










…っ!?




「あの…神威さん」



「呼び捨てでいいって」




「神威…。あの…」







神威は葉月を傘に入れているが、腕を葉月の腰に回している。




う////




これじゃまるで…









恋人みたいじゃん…!





「えー?駄目?俺、君みたいなこと一回デートしてみたかったんだよ。」


「恥ずかしいんですけど…会ったの2回目なのに…」





「沖田にもされたことないから??」








……!?




今、





何て…?





「あ。」





神威はあちゃー…という表情をした。




「ちょっとおしゃべりしすぎたかな。いい加減このくらいにしておかないと面倒なことになるんだよね。」


「ちょっと神威!?沖田を…総悟を知ってるの!?」




神威は答えず、葉月の頭を撫でた。




小さい子を相手するみたいに。





「デートはオシマイ…か。ほら、あそこの人、ビームでも出しそうな目で俺達見てるじゃん?」



神威の視線をたどると…。









「た…高杉……!?」








「しつれーい。」











――――――そこから視界が真っ暗になった。
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