長編
□第三十六訓 傷と絆
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「土方…さん…」
聞き慣れた低く力強い声に安心する。
「どうしてここが…」
土方はそれには答えず、血だらけで地面に伏す沖田に向かって怒鳴った。
「総悟…立て。
てめェの女はここまでの覚悟を背負ってんだ!
だから…てめェも…んなところにいつまでも寝てねェでちったあ男としての役目ってモンを果たせバカ!」
「はあ…。これが…寝てるように見えますかィ…?」
ガッ
沖田は剣を地面に突き立てよろよろと立ち上がる。
「…ケガ人ですぜ?寝かせてくだせェよ土方コノヤロー」
そして葉月に笑ってみせた。
…何とも腹黒い笑みだった。
「…さっきのは即答だったなァ。…アンタが真選組捨てるって答えた時、俺ァこのまま逝っちまうと思いやした」
葉月はしれっとした顔で言った。
「ま…こんなので死ぬタマじゃないでしょ、アンタは。」
「へへっ流石は俺の雌犬」
「誰が雌犬だ!その傷口開いたろか!!」
沖田と葉月は互いに背中合わせに立った。
「随分ドSになったなァ、葉月。誰に似たんでィ?」
「さあ、誰だろね?」
「生意気言うバカにはお仕置きが必要ですかィ…バカ」
「バカ」
「俺の二倍バカ」
「あたしの二倍バカ」
「三倍」
「いや四倍」
「…五。」
「六」
互いに罵倒しながら、
2人は背中合わせになり、お互いの左手を固く握った。
土方や近藤もゆっくりと鬼兵隊と春雨の軍に近づく。