長編
□第十一訓 解き終わっても見直しを忘れずに
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バイクはアテも無く、走り続けた。
ぽつり、ぽつり会話を交わしながら。
「風、寒くねーか」
「大丈夫です。」
「よーし。とばすから俺につかまってろよ!」
銀さんの背中は、大きい。
「葉月ちゃんよ、チンピラ警察の仕事はどーなんだ?」
「あ、ああ…まあ…慣れれば楽しいですけど。」
「なんかヤベー目に遭ったりしてねーか?」
「特には…」
何だろう、突然。
「…ならいいけどよ…あー甘いもんが食いてーなあ…よし、パフェでも食うか。このまま走っててもしょーがねーし。」
銀さんはなんだか話題をそらしたような気がした。
あたしたちは甘味処に入った。
今度はあたしから尋ねた。
「銀さんって攘夷戦争に参加してたんですよね?」
「んあ?そうだけど。…もうずいぶん昔だな」
「桂も一緒だったの?」
「ああ」
「あとは坂本っていう商人と、…」
「…高杉だ」
銀さんがパフェを食べるのをぴたりとやめた。
「あのな、葉月ちゃん。俺ァいつでもてめーの味方だからな。それだけは覚えとけよ。ゴリラんとこでも相談できねーようなことは、銀さんに話せ。」
「ありがとう…ございます。…って何なんですか、今日の銀さん。なんか変ですよ?糖の取り過ぎで、脳やられたんですか?」
「…。」
ったくこいつは…。
…人がせっかくかっこいいとこ見せてるってのによ…。
…可愛げのねー野郎だ。
その時だった。
「あの眼鏡襲ったときにはさァ…」
甘味処から出ようとする天人の2人組の会話が銀さんとあたしの耳に入った。
「聞いたか」
「はい。」
「行くぞ!」
あたしはバイクの後ろに飛び乗り、2人の後を追った。