長編
□第十三訓 やるからには半端はダメ
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沖田さんに連れられてやってきたのは店の奥の小さな小部屋。
沖田さんは戸をバタンと閉めた。
…沈黙。
2人きりになったのはそーいや久しぶり。
「さてと。葉月には何をしてもらおっかな…」
あ、やっぱりばれてますよね。うん。
何をされるんだ…!
あたしは覚悟を決め、身構えた。
しかし、次の瞬間、
沖田さんは、思いもよらない行動に出た。
ゆっくりと歩み寄り、
葉月を抱きしめたのだった。
「!!?」
これは…何!?何がいいたいの!?
いつもからは想像できない行動に、頭が真っ白になる。
「やっと、帰ってきましたねィ」
「沖田さ…」
「会いたかったでさァ。」
「あ…あたしもです…」
これは…ホントのこと。
暇さえあれば、沖田さん今何やってんだろーとか考えてたから。
「アンタが真選組離れてる間、本当はずっと葉月今何してんのかなーとか考えちまってて…仕事もロクに手がつきやせんでした。やっぱりアンタがいねーと上手くいかねーや」
それはいつものことでしょ…とツッコミを入れたかったが。
沖田さんは葉月を離した。
「聞きやしたよ。アンタ、天人と戦って死にかけたって…。旦那の助けも借りず、一人で向かっていったって…」
「…うん。」
「連絡もつかねーし、何処にいるのかもわからねーし、どれだけ心配させりゃ気がすむんでィ。…もっと俺を頼ってほしかったでさァ」
「ごめん…なさい。」
なんて言ったらいいかわからず、とりあえず謝った。
「…いや、何もできなかった俺こそ謝らなきゃならねーぜ」
あの沖田さんが、謝ってる!?
何で…
ふと、神楽ちゃんの言葉が浮かんだ。
(いい加減気づいたんじゃないアルか?)
(本当は葉月が大好きアルよ)
…いや、嘘嘘。
あるわけないって。
何処の世界に好きな人に首輪付ける野郎がいる?
何処に好きな人を病院送りにする野郎がいる?
あたしは出来るだけいつもの感じに戻そうと思って、こんなことを言った。
「…ガラにもないこといわないでくださいよ。それより3日間頑張って天人倒したのに、褒めてくれないんですかあ?」
…倒したのは、あの男の子だけど。
沖田さんは笑った。
「…ああ、そうですねィ。葉月、よくがんばりまし…」