長編
□第十八訓 家に帰るまでがおつかい
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やっちゃった…
確実にへまやらかした…。
意識が戻った時は、もう遅かった。
手足はきつく拘束され、剣は折られて近くに転がっている。
ここに来るまでのルートを把握すればよかった…。
残念ながらここがどこだかは全く分からない。
それにしても。
高杉て何なんだろう。
かつては銀さんや桂と戦ったという鬼兵隊のトップ。
そんな人が近藤さんや副長ならまだしもあたしのことを知っているの…?
「あ、起きたか。」
思考の時間はここまで。
アイツらが来る。
「真選組でお姫様状態らしいな、アンタ。」
…何処の世界に焼きそばパンをパシられるお姫様がいるよ。
集団の一人が葉月の顔を覗き込むようにして言った。
「…なあ、引き渡す前にさァ…」
「馬鹿。そんなことしたら首切られるぞ」
一人が葉月の顎をくぃっと持ち上げた。
「いやァ、でももったいねーんじゃねえの?これだけの上玉、もうこっちで「処分」しちまうってのは?…なあにバレねーように上手くやるからさ…」
そして男は葉月の隊服に手をかけた。
背筋が凍った。
「…暑苦しい制服だな。中身は…」
「触んな!!」
あたしは思いっきり男の手に噛みついた。
男は悲鳴ををあげた。
犬か、あたしは。
「オイ…やっぱりちょっと黙らせてからだ」
そして持ってきたのは、ライフルだった。
あたしは精一杯の侮蔑をこめて言った。
「侍なら、剣にしたら?」
男は何も答えず、ニヤッと笑ってライフルを構えた。
あたしの脳裏に最期に浮かんだのは、ドSな笑みを浮かべる
沖田さんの顔だった。
そうだ、
ごめんなさい。
焼きそばパンとジャンプ、無理みたい。
あとね、
あんなこと言っちゃってごめんね。
ごめんね。
ホントは
あたしね
大好きなんだよ
大好き。沖田さん。