長編
□第二十九訓 子供は狭い所に入りたがる
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「こっちはカタがついたぜィ」
沖田が剣を真っ赤に染めながら葉月のほうへ歩いてくる。
「あたしも」
二人は土方たちを探しに、港のほうまで歩いて行った。
***
「いた?」
「いや、とんと姿が見当たりやせんが…あ、俺、気がつかない間に斬っちゃってた?」
「冗談に聞こえんからやめろっ」
安心しきっていた二人は気がつかなかった。
背後に…
ガンっ!
鈍い音がに続いて、バタバタと人が倒れる音がした。
頭を殴られた二人は揃って地面に伏した。
***
「オイ…起きろ…いつまでまったり寝てるんでィ」
沖田のふてぶてしい声で目が覚めた。
「んんっ…?」
そこでようやく事の重大さに気付く。
葉月は沖田と背中合わせに縛られて、床に座らされていた。
秋も深まってきたせいで、床が冷えている。肌寒い。
「完全にやらかしたぜィ…」
沖田は深刻な表情を浮かべた。
「ドラマ録画してくんの忘れた…帰ってしようと思ってたのに」
「あたしもツ●ヤにDVD返すんだった!」
「お前らちょっとは焦ろうよ!」
声のもとは暗くてわからない。もっとも、部屋の大きさを確認するのもやっとなくらいに暗かった。
「誰だお…いででででっ!」
「オイ暴れんな葉月!痛ェだろーが!…聞こえてんのか絶壁女」
「誰がだァ!」
「聞こえてたか」
そんな不毛なやり取りの後、沖田が声の主に向かって言った。
「…で、さしずめ俺達使って真選組釣ろうっていう魂胆だろィ」
「ははは、それもいいかもな。けど俺は一番隊の斬り込み隊長さんに興味はねえ。…隣の絶壁女だ
「ああ上等だァ!ニ度とその口聞けないようにしてやらァ!」
「葉月、そのネタしつこいって周りから言われてますぜィ」
「知るかァ!」
葉月は冷静さを取り戻し、訊いた。
「…で、何者なの。」
「はんっ!覚えてねえとは言わせねえぞ…俺達『破天荒』の名!」
「…嘘…!あの『破天荒』!?
えーと……どちら様?」
「覚えてねーのか!…病院でのテロ計画をお前のバカな行動で邪魔された無敵の攘夷派グループだ!」
ああ!あったねそんなこと!
窓から飛び降りて、それで総悟に…
…//っ。
…いや、やめよう、過去は振り返らないぞ。うん。
「今こそ復讐がしたくてなァ。」
「じゃあ俺は関係ねーんですね。お疲れしたー」
…コイツ!
「声」は笑った。
「まあ待てよ。幹部を一気に二人も消せるんだ。逃がすつもりはねえよ。…二人仲むつまじく消えてもらおう」
…彼女のコンプレックスを優しく包み込んであげるどころか炎上させるような奴とあたしを『仲睦まじい』つ言うのなら…ね。
今度は声のかわりにカチャ…カチャ…という小刻みな音がした。