長編
□第二十九訓 子供は狭い所に入りたがる
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「一番隊!俺に続け!」
あれからしばらくたった。
仲間の死なんて、何度か見てきた。
でも、今回は流石に応えた。
目をつぶれば、今でもあの人の人懐っこい笑みが脳裏に浮かぶ。
何で…あの時前に出た?
何で、自分は無力だった?
…
考えても、仕方ないよね。
あたしは思いを振り切って、立ち上がった。
次の戦いが、待ってるから。
***
総悟が出撃の合図をした。
あたしも動こうとしたが、総悟に腕を掴まれた。
「?」
「お前は残れィ」
総悟は珍しい、真面目な顔でこう言った。
「行くな」
「何で?指揮とるひとがいなくちゃ難…」
「いいから」
総悟は黙って葉月を抱きしめた。
「……こんなとこで…かよ///」
「うるせーや。俺がこうしたいんだから仕方ねえだろーが」
しばらく抱きしめた後にこう言った。
「んじゃあ…指示を頼みまさァ、『副隊長』。」
「…了解…っ」
これはコイツなりの、「がんばれ」だったんだろう。