長編

□第二十九訓 子供は狭い所に入りたがる
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カンっ…カンっ…カンっ…






二人は無言で鉄の棒を叩き続けた。




外はすっかり冷え込んでいる。


初めは元気だった葉月も、だんだんと動きが鈍くなっていた。



そこへ。







ポツっ…ポツっ…




サァァァァァ……









雨だ。







…しかも雨漏りときた…。





大丈夫か、葉月は…




そう思って葉月のほうを見た。



「あり?」





いない…?






と思ったら、少し離れたところでうずくまっていた。



「オイ、大丈夫か?」
「うん、」




そう答える葉月の顔は、ほんのりと赤い。




「ひょっとしてアンタ…熱?」

「あー…ちょっとね…ゴホッゴホッ…」




沖田は葉月の様子から、重大さがわかった。



「…!オイ!しっかりしろィ!体、めちゃくちゃ冷たくなってんだろーが!」


「うん…」



葉月の返事も冴えない。




「ひょっとしてアンタ、今日は朝から熱があったんじゃ…」





この前から、そういえばボーっとしてる葉月をよく見かけたが、あれは寝てなかったからなんじゃ…?

俺達に無理して、疲れてるくせに元気にふるまってたんじゃ…?


…コイツのやりそうなことだ。
なのに俺は気付けなかったんでィ。




カチッ…カチッ…






時間がない。



残りは10分を切っていた。
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