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□その少女、少年につき対立
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「昼休みに生徒会室へ行きなさい。」

編入から一週間ほど経つかという頃先生に言われた言葉にとうとうか、と素直な感想を抱く。
生徒会、つまり風紀への問題を指摘しているのだろう。
現在の3−Bの状況がそれをありありと表していた。

男であり女を主張するあたしは扱いにくいのか、腫れ物のように扱われている。早い話が浮いているのだ。
あたしが女であれば女子のグループが声をかけてくれるだろう。逆もまた然り。
しかしながらあたしは女であることを主張する男なのだ。
扱いにくいにも程がある。
そんなあたしを無視でもしてくれればいいのに、優しいクラスメイトは戸惑いながらも最低限の関わりを持ってくれている。そうでなければ、真っ先にいじめの対象になりかねないのだ。
つまりは、風紀を乱すもの。あたしの立ち位置はそんなものであって、今回の呼び出しも当たり前のものだと納得する。
まぁ、納得のいかない呼び出しだったとしてもその呼び出しを拒否するという選択肢はあたしには用意されていなかったりする。
女装であたしの立場は大分ぐらついているのに、それに加えて呼び出し拒否なんて出来たものじゃない。
真面目に定評のあったあたしだ。きっと女のままだったとしても拒否することはないだろう。

だとしても。
鋼鉄のハートの持ち主とは言いづらいあたしを憂鬱な気分にさせるには十分だった。
生徒と名のつくだけあって、きっと待ち構えているのは生徒なのだろう。
いっそ、教員の方が気が楽だ。

生徒は当たり前ながら中学生で、子どもだ。
精神的にではあるがこちらが年上である以上最終的に引くのは此方になるだろう。
教員だったなら此方が年下なのをいいことに、その事実に甘えてやるのに。
思わず漏れたため息に心を淀ませながら目の前の扉をノックした。







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