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□ただの馬鹿
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瞳を閉じてみれば
いつも思い浮かぶのは柳くんの
ムカつくぐらい端正な顔。
だけど、一番ムカつくのは、それを思い描いてしまう自分。
だって、大好きで仕方がなくて
それなのに、思いの伝え方を知らないなんて、
私はただの馬鹿だ。
“初恋だから、仕方がない”
自分に言い聞かせてみても、やっぱり止まらないのだ。
湖のように溢れでる、苦しい気持ちと
初恋ならではの、レモンのような甘酸っぱさが。
私は、レモンを甘酸っぱいと思ったことはないのだけれど。
それでも、はっきり言いきれるのは柳くんが好きだと言うことくらいなのに。
告白ほど怖くて、苦しいものはないのではないだろうか。
私はスカートの裾をぎゅっと握って柳くんを見上げた―――
ただの馬鹿
思いの伝え方なんて
“好きだ”と言うだけで充分なのに