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□笑顔で告げて
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貴方には、笑顔が似合う。

泣き顔より、儚げな顔より
なにより、その優しげな笑顔が綺麗で、綺麗で。

「ねぇ、精市。」

呼べばいつだって、笑顔で返事してくれたのに。
今は、全国大会が終わった今だけは、
返ってくるのは彼の小さな嗚咽。

「ずっと、さっきの試合続いてればよかったね。」

私の言葉にようやく精市は顔を上げた。
その綺麗な瞳は、少しだけ涙で濡れていて
息を呑むほど綺麗だ。

「精市、楽しかったんでしょ?」

終わってほしく、なかったんでしょ?

立ち上がった彼の背負う夕日色ジャージは、
力強くて、切なげだ。

「ありがとう。」

それから、精市は振り返ってお礼を言う。

私に、笑顔を向けて。

そっと彼の手が目の前に差し出される。
それに自らの手を重ねると、彼からは思いもしない力で引っ張られる。

「ほら、行こう。まだ、終わってないから。」

俺たちの未来は、と続ける彼が
少しだけ、ほんの少しだけ
好きだよ、と呟いたのは今はまだ、

気づかないフリをしてあげる。

だからね、はっきりと告げるのは
私の好きな、優しげな笑顔で







笑顔で告げて

私への思いは

どうか、私の一番好きな貴方の笑顔で














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