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□初恋の再来
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数年前に見た君は
今より随分幼かった。

名前も知らない。
相手もきっと私を知らない。

だけどね、好き。だった。
そう、初恋だった。

だって優しかったから。
ぶっきらぼうで無愛想だけど、
どうしてかな
それが好きだった。

毎日駅でお父さんらしき人に手を引かれて
ブスっとした顔で歩いていたのに。
いつまにか、居なかった。
違う、こなくなった。

その時はね、あぁ、初恋なんてこんなもんだ、
と知りながら、子供らしく大きな声で泣いたっけ。

ふと、久々に寄った駅で過去を思い出していた。
帽子を被ったあの子が居ないかと
半信半疑で見回してみる。

・・・うそ、
居た。帽子の彼。

ドクンと心臓が脈打つ。
初恋が、また始まった。

あぁ、今度こそ言わなくちゃ
泣かなくて済むように、

「あのっ・・・!」

振り向く彼は、数年前より
ぶっきらぼうで無愛想で
かっこよかった。

「わ、私、名字名前って言います。名前を聞いてもい、いいですか・・・?」

そっと彼を見上げると、
面白いものを見るような目で見つめていた。

「・・・越前リョーマ。」

越前リョーマ・・・
噛み締めるように、呟いた。

「あれから、ちょっとは成長したんだね名前。」

その言葉に顔を上げると、
越前くんは手をひらりと振って行ってしまった。

“まだまだだけどね”と、呟いて





初恋の再来

違う、

数年前から続いていたんだ。

この恋は。








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