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□もう一度触れたい
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君は、いつも遠目から僕たちを見てるね。
遠慮がちに。

他の子たちは、堂々と、むしろ遠慮してほしいくらいに見てるのに。

だからかな。
僕が惹かれたのは。

名字さん、君に触れたい。
ほんのり赤く染まった頬に、触れたい。

君は、いつも誰を見てるの・・・?
誰の、テニスを見てるの・・・?

僕だったらいいのに。

らしくもなく、習慣になってしまったように
フェンスの外をぐるりと見渡す。

名字さんの姿を探すため。

今日も、見つけた。
フェンス越しの君を。

はた、と足をとめふわりと微笑む。
だって君と目が合ったから。

あぁ、君に、触れたい。

思った途端、タイミングよく
ボールがフェンスを越えていった。

「僕が取ってくるよ。」

ほんの少し英二に感謝しながら
彼女の元へと駆ける。

彼女は拾ったボールを僕の手の平に乗せた。
遠慮がちに。

僕は悪戯っぽく、彼女の頬に手を添えた。

「顔、赤いよ・・・?」

と、囁いて。

そして、手を離してコートへと戻る。
彼女に触れた右手を眺めながら。

あぁ、だめだ。
一度じゃ足りない。

もっと触れたい。

君に









もう一度触れたい

だめだ

一度じゃ足りない。

もっと、もっと

君に触れたい











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