title

□手を繋いで走ろう
1ページ/1ページ


手塚は厳しいから、マネージャーの私にも何かあるたび走らせる。

ホント、冗談じゃない。
ただタオル1枚部室から運ぶの忘れただけで10周だよ?

まぁ、少ない方だけど。

「私体力ないんだよなぁ・・・」

溜息混じりに、コートの先を見据えて言う。

こうしていても仕方が無い。
ぎゅっと靴紐を縛りなおして、一息ついた。

さて行きますか!

「名前。」

走り出そうと一歩踏み出す瞬間に呼び止められた。

「・・・不二。止めないでよ。」

折角気合入れたのに、と頬を膨らませると
不二が手を差し出してきた。

「一緒に走ろうよ。」

ボクも、10周なんだ。と。
軽々しく言うなよ。
選手とマネージャーの体力差を考慮しろ。

反抗しようと口を開いたところで、
不二は無理やり私の手を引き走り出した。

いきなりのことで、体がついてくはずもない私は、
ペースを加減してくれてる不二にされるがままついていく。

手は繋いだままで。

繋がれた手が、熱いのは走ってるせい
動悸がするのは、体力がないせい

ねぇ、そうでしょ?

「ボクは名前が好きだよ。」

ギュッと、私の手を握る手に力がこもった。

今更、私も好きだ何て言えないから

私もそっと力を込めた。

想いが、気持ちが、不二に伝わりますように









手を繋いで走ろう

もっとこの時間が続けばいいのにと

零れた言葉が不二に届いていませんように













[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ