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□あなたを覚えてしまった
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今日は日直で、いつもより早く家を出た。
駅前でいつもは見ない顔が並ぶ中で少しばかり緊張しながら電車に乗る。
・・・あ。
い、嫌だ。
誰かに太ももを撫でられる。
いわゆる、痴漢。
嫌、嫌だ!
でもこの混雑した電車の中で、助けを求められる人なんて居ない。
「・・・っ!」
叫び声を噛み殺しながら降りる駅につくのを必死で待つ。
と、不意に太ももを撫でる手が離された。
「大丈夫?」
振り向くと知らない男の腕を掴んでいる、美少年。
彼の制服には見覚えがある。
かっこいいなんて現金だろうか。
「とりあえず、降りようか。」
もう駅だから、そう言って彼はにっこりと笑う。
彼は、掴んでいた男の腕を解放して、その手で私の手をとる。
「ボクは、不二周助。キミはなんて言うのかな?」
「あ・・・私は名字名前です。」
不二、周助。
そっと噛み砕いて飲み込んだ。
私、あなたを忘れられそうにありません
あなたを覚えてしまった
今日会ったばかりだけど
あなたと
この胸の高鳴りは
もう絶対
忘れられない