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□懐かしいキスをする
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昔、ほんの数年前。

私は一度だけキスをしたことがある。

子供の・・・小学生の戯れだと言われてしまえばそれまでの、
軽いキス。

それから、一度だって、キスしたことはないけれど
あの時の手塚くんの唇と
甘いキスの感触は
今でも忘れられない。

「名字・・・名字。」

誰かが私を呼んでいる。

だけど、誰?

私の意識は遥か昔まで戻っている。

瞬間、唇に柔らかい何かが重なった。

私は、はっと意識をこちらへと呼び戻した。

「手塚、くん・・・」

彼はじっと私を見つめ、
数年前と同じように頬を染めすまないと呟く。

私はそっと自らの唇を指でなぞる。

その瞬間、キスをしたんだと理解した。

そのキスは昔と全く変わらない。

甘い、甘いキス。

「手塚、くん・・・好き、だよ。」

不意に零れた告白は
甘いキスで溶けていった








懐かしいキスをする

これまでも

これからも

私はこのキスだけ覚えていればいい








2011,09,12
青学:甘い恋10題 完結



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