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□流れない涙は
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景吾が、好きだよ。
伝えたのはいつだったか。

名前、愛してる。
伝えられたのはいつだったか。

遠い遠い、昔のような気さえする。

だからかな、
私達の心がすれ違ったのは。

景吾のインサイトを信じすぎていたのも悪かった。
伝えなくても、景吾には伝わってると思ってた。

だけど、彼の口から“別れろ”と
零れたのは確か。

私は泣くこともなく、ただ、
その場に立ち尽くした。

景吾を呼び止めることもできず
あぁ、捨てられたんだ、と。

好き、だったのに。
違う、
好き、なのに。

涙は流れない。

まるでこの展開が読めていたとでも言うように。

この恋物語に終りがあるのが当たり前だと言うように。

今更気づいたって、遅すぎる。
私、景吾が居ないと生きていけない。

「景吾、大好き。」

私の言葉は、虚し過ぎる静寂に
溶け込んでいった―――









流れない涙は


この事実を

認めたくなくて

認められなくて











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