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□それは私ではないから
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優しい貴方が見てるのは
いつだって、私じゃない。
宍戸さん、宍戸さんと彼はその名前だけを繰り返す。
私だって名前を呼んでほしいのに。
男性である宍戸先輩にまで嫉妬する私はおかしいのだろうか。
「名字さん?」
急に声をかけられて振り向くと
そこに居たのは紛れもなく、先程まで私の思考を独占していた彼。
「顔赤いけど、大丈夫?」
「う、うん!大丈夫だよ、鳳くん。」
私の言葉を聞いて、宍戸先輩のもとへと走って行く彼。
いつだって、彼の隣にいるのは宍戸先輩で、私じゃない。
いつの間にか頬には無数の涙が伝っていた。
それでも、傍に居たいなんて
それは私ではないから
傍に居るのも
名前を呼ぶのも
私じゃないの