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□カミサマ、この恋を
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そっと膝元で眠る彼のふわふわした髪を梳く。
柔らかい髪は、私の指を掠め流れる。
至福の、時間。
「ジローくん。」
好きだよ。
なんて言えないよ。
私はあなたの好きな人を知っているから。
「・・・名前、ちゃん・・・」
彼は寝言で私の名前を呼ぶ。
毎日、毎日、同じことの繰り返し。
止めなくちゃいけないのに、
彼と一緒に居たいという欲に私は一度だって逆らえたことがない。
いつの間にか頬を伝っていた涙が、ジローくんのスベスベした肌に落ちる。
その赤い唇から、好きという言葉が零れ落ちるのは
私にじゃない。
柔らかな笑顔を向けるのは私にじゃない。
苦しい、苦しい。
流れる涙は止まらない。
もう少しだけ、眠っていてね。ジローくん。
そしたらきっと、笑顔でおはようって言うから。
だから、だからね。
もう少しだけ、この恋を
カミサマ、この恋を
もう少しだけ、
もう少しでいいから。
彼を愛しく想うこの感情を
恋と呼ばせてください