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□偶然がくれた恋だった
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駅で私は“光”と叫んだ。
兄を探していたから。

でもね、アンタ誰なんすか、と私に答えたのは黒髪ピアスの知らない人。

「もしかして、光さん・・・?」

私の問いにアンタが呼んだんやないか、と
彼は答えた。

もしかしなくても、人違い。

“ごめんなさい、兄を探しているんです”と
謝れば、何故か彼は私の手を引いて
人ごみから出た。

「アレとちゃうん?」

指さした方向に間違いなく兄の姿があった。

「なんで、分かったの?」

ついついつられて、
敬語をやめる。

だけど、光さんから出たのは
意外な言葉。

ただ一言、“似てるから”

「ほな、さいなら名前さん。」

彼はひらりと手を振って
私に背中を向けた。

瞬間、キュっと胸が締め付けられる。

もっと話したかったな・・・

この感情を“恋”と呼ぶのなら

これは必然?

いや、偶然。







偶然がくれた恋だった


この偶然は

きっと運命。









財前が名前さんの名前を知っていたのは、お兄さんが呼んでいたからです。




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