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□全てを捧げた恋だった
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初めて白石を見た瞬間、
あぁ、この人になら私は全てを捧げられる。

そう思った。

この感情を男子に対して抱くのは初めてで
きっとこれから先も抱くことはないと思う。

それだけこの感情は特別。

つまり、恋。

「白石ぃ〜」

フェンスとコートの距離は妙に遠い。

私の言葉も、彼には一切届かない。

それを知っているからこそ
毎日のように通り過ぎざまに“好き”の一言を置いていく。

何をしたら、私を好きになってくれる?

何をあげたら、付き合ってくれる?

なんでも、するから

なんでも、あげるから

あなたの心を私に下さい。

「ほんま名字はアホやなぁ。」

いつもの帰り道で絶対に聞くことのない声に振り向いた。

「白石?」

「毎日、聞こえてんで“好き”て。」

白石の笑みは眩しい程輝いている。

私の思考はついてこない。

聞こえていた、つまりそれは。

「白石に、私の全部をあげる。だから・・・」

あなたの心を下さいと続ける前に、その言葉は白石に重ねられた唇から溶けていく。

「ほなら、俺は名字に全てを捧げるわ。」

せやから、俺と付き合うてと、彼はにっこり笑った







全てを捧げた恋だった

私の全てをあなたにあげる。

だから

あなたの全てを私に頂戴










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