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□ずるいから好きです
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「名字。」
そう言って、私の唇を奪うのは仁王雅治。
別に彼は私の事を好きなわけではない。
彼氏でもない。
でも、何故か
たまにこうして、私にキスをしてくる。
“好いとうよ”と愛の言葉を
私じゃない誰かに贈って。
それってずるい。
私はしっかりと仁王を見てるのに。
仁王を愛してるのに。
仁王は私じゃない誰かを見てる。
「仁王は、ずるいね。」
私じゃない誰かを愛してるのに、
私に逃げてくる。
でも、そのずるさのおかげで私は仁王に触れられる。
だから仁王のずるさも好き。
私の言葉に気を悪くしたのか、
また彼の端正な顔が近づいてくる。
「好いとうよ、名前。」
ずるいから好きです
こんなところで呼び捨てなんて
そんなのずるい。
でも
そこが好き