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□その笑顔は反則だから
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柳くんはあまり笑わない。
会って間もない頃は淡々と事務的な話をするだけだった。
でも、今は?
たまにフッと彼は口角をあげる。
それはたまらなく美しい笑みで
見ただけで顔に熱が集まるのがわかる。
「名字。」
彼の声は甘く、悲しい。
あぁ、私は笑ってほしいのに。
「何か、あった?」
私の言葉に柳くんはか細声で言った。
怖い、と。
きっと幸村くんのことを差しているんだと本能的に感じた。
「大丈夫だよ、大丈夫。」
私はただひたすらにそれだけを繰り返した。
他に告げる言葉が見つからない。
「ありがとう。」
そう言って笑う柳くんは、
今まで見たことがないくらい綺麗で儚い。
あぁ、私はこの笑顔が見たかった。
「大丈夫だよ。」
私はもう一度、自らに言い聞かせた。
その笑顔は反則だから
優しい笑顔は
私にだけ見せて