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むわっと生暖かい風が通り抜けるのを感じて、眉を顰める。
あぁ、まだあの人は来ないのかと1人ごちた。
当たり前と言えば当たり前なのだ。
今は待ち合わせの30分も前なのだから。
あたしが早く来たのだから、待たされる事に文句は言えない。
だけど、どうしてもうざったいのだ。

「君、1人なんだろ?俺たちと遊ばねー?」

このチャラついた男が。
ナンパされるとは思わなかった。
いつもあの美形の中に紛れているあたしは、妬みの視線こそ注がれてもこういう視線には慣れていない。
勿論対処の仕方も分かるわけもなく、かれこれ暫くの間この状態なのだ。
もしかしたらあたしが長く思っているだけで、本当はほんの数分なのかもしれないけれど。

早く、来てくれないだろうかと、何処までも他人任せにする自分に嫌気が差しながらも、チラチラと時計に目をやる。
早く、早く!

「ごめんねー待ったー?」

思いが通じたのかと顔を上げた瞬間、絶句。
待っていた人とは違う男。
更には、恐らく今居る男よりも質の悪い、女好き。

「この子、今から俺とデートだから諦めてね?」

その男が言うが早いか、あたしを囲んでいた男たちが雑踏へと消えて行った。

オレンジ色の髪。
あたしはその前髪の一部がくるっとした、鳩のような髪が大好きだった。

あぁ、今日は厄日か、とため息を吐くと幸せが逃げると笑われる。
ちらりと時計を見ると待ち合わせまで、あと15分といったところだ。

「ね、キミの名前は?」

目の前のオレンジ頭が嫌いなわけじゃない。
だけど、何でか今は早く来てくれないかとまだ見えぬ姿に期待した。








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