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「ちゃお!」

気取ったふりして、良くもない発音で、そう言った。
目の前の男達に。

1人はさらりと流れる髪にすっととおる目。
もう1人は反対に、短い髪にぱっちりとした目。
それでもこの2人の髪色は、同じ色。

あたしよりも明るい茶色。
なのに、チャラついた感じは一切なくて、綺麗とそう言われる色だ。

「おはよう、夢羽ちゃん。」

彼はスッキリ細い指をヒラリと揺らし、隣に連れられた弟はパチパチと瞬きを繰り返す。

「おはよう、周助。」

これには、流石の不二もチラリとその青い瞳を覗かせた。
それでも、仕方が無い。
彼らは兄弟で名字が一緒なのだから。
裕太を呼び捨てにするには、些か非常識で、敬称で区別するにはあたしの年齢は微妙すぎた。
ならば、と不二を呼び捨てにする。
まぁ、半分は不二の反応を楽しみにしていたのだけど。

「今日だけ、ね?許してくれると嬉しいんだけど。」

自分の口角がにやりと上がるのが分かった。
さあ、どんな反応をするのかと内心わくわくと期待する。
そんなあたしの笑みを視界に捉えたのか、不二はその形のいい眉を潜めていいよとそう言った。

「ありがとう。」

ちょっとだけ、期待していた反応とは違った。ちょっとだけ。
それなら裕太を呼び捨てにしてみれば良かったと、ほんの少し思ったけど、不二のあの綺麗な青い瞳が見れただけ得したとそう考えることにした。

跡部とはまた違う、宝石のような青い瞳。
それを綺麗だとのたまるあたしはどこまでも現金で、笑いがこみ上げる。

「さて、と。」

そう言いながら裕太に振り向いたあたしは卑しい笑みを浮かべていたのだろう。
裕太の肩がびくりと揺れてそれを証明していた。











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