U

□45
1ページ/2ページ


ぼふんと微かに音を立てて体が沈む。
それを見て裕太は僅かに顔を顰めた。

あたしの行動は非常識で、ある意味裕太の行動も、非常識だ。

「家に来るんだろ?」

裕太は言った、それは質問ではなくて確認。
だからあたしは誘いにのった。

まぁ、別に裕太が言わなくても不二が誘っただろうから結果は変わらなかったのだろうけど。
変わったとするなら、通される部屋が裕太の自室になっただけ、多分それだけ。

あたしが勢いをつけて飛び込んだのは、裕太のベッドだ。

「お前なぁ・・・」

やり切れないような言葉をこぼす裕太に思わす笑った。
人のベッドに飛び込むのも大概非常識だけど、初対面の女の子を部屋に連れ込むのも非常識と言えないだろうか。

そう反論しようとして、やめた。

代わりに口が零したのは、自虐的な言葉。

「あたし、可哀想でしょ?」

言葉だけ聞くと、それは構ってちゃんの可哀想な戯言でしかない。
でも、あたしの口角は自分で分かるほど、弧を描いている。

裕太の反応が楽しみだと言わんばかりの、笑み。
裕太に伝わっているだろうか。

「・・・慰めて欲しいならせめて、表情くらい作れよ。」

裕太は溜息まじりにそう言いながら、寝転ぶあたしの隣に腰を下ろす。
裕太の体重でさらにあたしの体がベッドへと沈んだ。

それを見て、その、裕太の言葉を聞いて、何となく安心した。

この子は、大丈夫。

大事なことはちゃんと分かってるんだ。あたしと違って。

ちゃんと、不二が家族だと知っているから、大丈夫。

「不二、あたし、」

何となしに言葉を続けようとしてそれは途切れた。
不二が入ってきたから。
彼はトレーに3つのグラスとパイを載せ、立っていた。








次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ