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side Syusuke

夢羽ちゃんを家に呼んだ。
でもそれは、半ば裕太がしたようなことで、ボクは殆ど何も出来ていない。

仄かに温かいティーポットを傾けるとさらりと飴色の紅茶が流れ落ちる。
それはとぽりとカップへと注がれていた。

ありがとう、ってそう言ったんだ。
ボクが彼女を裏切ったとき、夢羽ちゃんは中途半端なボクを良く思っていなかったはずなのに。
確かに、ありがとうと言ったんだ。

その事に、涙が出そうになった。
今のこの、紅茶のように。
とぽとぽと音をたてて注いでしまいたいほど、彼女の笑みが悲痛に見えて、少しでも彼女を想っていたかった。
でも、仲間がバラバラになってしまうようなきっかけを自分で作ってしまうのもまた、嫌だったんだ。

その自分勝手な優しさを夢羽ちゃんが良く思っていないと知ったのは、水羽さんに言われた時。
いや、あれは叱られたと言ってもいいかもしれない。

「中途半端な優しさなら、要らなかったと思います。」

水羽さんの言葉が痛かった。
妹を思う気持ちが、まるでボクのようで。

裕太と夢羽ちゃんが似ていると思ったのと同時に、ボクと水羽さんも似ているのだと自覚した。
ただ、彼女達はボク達よりも大分不器用で素直じゃない。
でも、だからかな。
水羽さんが向ける大石へのあからさまな好意も、夢羽ちゃんの人をからかうような態度も不思議とボクをイラつかせない。

不器用だからこその思いやり、それが彼女達の間にはある気がする。
確実な家族の糸が繋がってるんだ。

最後の一滴がカップに落ちる。

それを合図に裕太の部屋へと足を向ける。
きっと裕太も夢羽ちゃんを憎めないはずだから、愛しいと思うはずだから。
今は少しだけ3人で談笑でもしてみようかな。

きっと夢羽ちゃんの年齢を知ったときの裕太の反応は夢羽ちゃんを満足させるだろう。
その光景がありありと思い浮かんだものだから、思わずクスリと笑みをこぼして、裕太の部屋をノックした。








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