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ストンと、不思議とその事実は胸に落ちた。何に突っかかることもなく。
寧ろ、引っかからないことに違和感を感じる程に。

あぁ、嫌いだ。あの子が嫌いだ。
不思議と口元が弧を描く。
まるで、まるで、悪女のようだ、と。
いや、違う。元からあたしは悪女だ。
周りも、自分すらも気づいて居なかっただけで、最初から綺麗な人間じゃなかったのだ、あたしは。

元の世界に居た頃、よく読んだ夢小説はどのヒロインもそれはそれは綺麗で感情移入など出来なかった。
幸村を助けたい、あの学校に全国制覇してほしい。
そう意気込むヒロイン達に、反吐が出そうだった。
どうしてこうも、この子達は自分の存在を否定するようなことをするのだろうか、怖くはないのかと臆病な自分とは違うヒロインが大っ嫌いだった。
未来を変えてしまえば、いつかその代償がくる。
それは大抵の場合、ヒロインがこの、テニスの王子様の世界から消えることだった。
その後ハッピーエンドになる話が大半だが、あたしはどうもその流れが好きになれない。

あたしは、消えたくないのだ。

ずっと彼らのそばに居たい。
だって、ここに来た目的はそもそもそれなのだから。

最初は、ただ、彼らを一目見るだけで良かった。
でも、一目見たら今度は側に寄りたくなって、寄ってみたらみたで今度は“永遠”に近い時を彼らと過ごしたいと思っている。
そんなあたしはどこまでも汚いけれど、一つだけ事実を挙げるとすれば、ただ、愛しているのだ、彼ら王子様を。

ならば、今、邪魔なのは早乙女百合に違いない。
きっと彼女も邪魔なのだろう。
彼女が日吉ただ1人を狙っているにしても、テニス部の面々を狙っているにしてもあたしはきっと邪魔者だ。

そっと、宍戸に連れられコートに向かうあたしは涙を拭った。
この涙が何を意味するのか何て分からないけれど。

あぁ、嫌いだ。あたしは嫌いだ。

こんな汚いあたし自身が、あたしは嫌いだ。








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