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□あの一瞬のキスを
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彼に向けられる笑顔が妙に悲しくてギュッと胸の前で手を握った。
私が見ることのできる不二くんの表情は笑顔、だけ。
本当はもっと。
違う表情が見たいのに。
「名字さん?」
そう言って覗き込んでくる彼の表情はやっぱり笑顔。
彼氏でもない彼と一緒に居たい、だなんて。
たくさんの表情を見たいだなんて。
私の我が儘だろうか。
「不二くん。私ね・・・」
あなたの事が大好きです。
そう呟いた瞬間に
そっと私の唇と彼の唇が重なった―――
あの一瞬のキスを
忘れられない
忘れたくない