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□キスなんてただの束縛
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「名前。」
俺の言葉に振り向いた彼女にそっとキスを落とした。
(・・・抵抗すればいいのに。)
名前はされるがまま瞼を下ろす。
ほら、そうやってアンタが抵抗しないから、俺もいい気になってキスを繰り返すんだ。
彼女でもない名前を俺に繋ぎ止めておくには、キスを繰り返すしかなくて。
らしくもなく、赤い顔を隠して深くキャップを被る。
いつだって俺の方からキスするくせに、余裕がないのは俺の方。
(いい加減にしてよね。)
心の中で悪態をついて名前に背を向ける。
Good bye、なんて言えるはずもなくて悔しさを噛み砕いた。
その欠片を集めて固めて、何になるのかなんて分かってるくせに飽きもせずに繰り返す。
「・・・I love you.」
俺が縛っていた感情はいつの間にか名前が縛っていた。
これだから、キス、なんて
キスなんてただの束縛
俺を縛る、感情の糸