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□キスはさよならを呑み込んで
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青春台駅。

いつも騒がしい駅前は今日もまた、騒がしい。
それでもあたしの周りはそこだけ異空間に紛れ込んでしまったように静かだ。

「英二。」

ポツリと呟いてその名を名乗る少年を探す。

「・・・見つかるワケないか。」

彼は今、部活中だ。

でも来てくれると思った。
来て欲しいと思った。

最後だ、これで、最後だ。
転校していくあたしはもう彼に会う術がない。
中学生じゃ簡単に県境を越えるなんて出来ないし。

あたしは唇を噛み締めて一瞬だけ駅に視線をやり、踵を返した。
今この電車に乗ったら後悔するだろう。

彼に一言も告げずに行くのだから。

一度だけ、もう一度だけ彼に会いに行きたい。

そう思ったら止まらなくて駅員さんに告げ一気に改札を走りぬける。

まだ、伝えていない言葉を胸に宿して駆けた。
ただひたすらに。

「英二っっ!!!」

校門をくぐって見つけた顔に飛び切りの笑みを浮かべ歩み寄る。

「あたし、貴方が好きです。」

だから、






キスはさよならを呑み込んで


“さよなら”

そう続くはずだった言葉を彼の唇は呑み込んだ










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