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□生徒会室を占拠して
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電気をつけるには少し早くて
つけないままでいるには気持ち暗めのそんな時間。

生徒会室にはあたしを含めた2人だけ。
かと言って甘い空気を纏うわけでもなくカリカリと音を立てながらひたすらにお互いの作業を進めていく。

「・・・ふぅ。」

一息ついて伸びをしながらふと跡部に視線を向けて、あたしは思わず息を飲んだ。

色素が薄めの髪にきれいな夕焼け色が反射してキラキラと光る。
使い古された言葉だけど、
それは、まるで切り取られた絵のようで
思わず、きれいと言葉がこぼれる。

跡部はそんなあたしに目もくれず、ひたすらに書類とにらめっこ。
いつもの鋭さを含んだ目はさらに鋭さを含んでいて、手元の書類を突き刺すように眺める。

そんな跡部を見つめていると、パチリと跡部と視線がぶつかった。

「あーん?何か用か?名前。」

「ん?」

跡部の視線があたしに移ると同時に、鋭い眼力が少しやわらぐ。

「ん・・・あ、電気つけようか?」

ジッと見つめられたあたしは思ってもないことを口にする。

折角きれいなのに、もったいない。

あたしの本音を見破ったように、跡部はただいい、と一言だけつげ手元の書類へ視線を戻す。
あたしもそれにならって、自らの書類へ視線を落とした。
その瞬間に感じる微かな違和感。
誰かからの視線。

今、この生徒会室にはあたしと跡部しか居ないワケで。
とするとこの視線は必然的に跡部から。
あたしはそう確信して、視線を上げた。
すると、跡部とまたしても視線がぶつかるものだから、目が離せなくなってしまって
ただ呆然と跡部を見つめる。

少しだけ暗くなった生徒会室で、二人分の息遣いだけが響く。
ソレが無償に恥ずかしくて止まっていた手を再度動かし始める。

するとまた、跡部からの視線を感じるものだから、今度は視線を向けずに
一言だけ呟いた。

「・・・ばか。」

精一杯の照れ隠し。






生徒会室を占拠して




二人で秘密の見つめ合い








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