U
□夏休みの教室へ
1ページ/1ページ
補習。
そんなものは名ばかりで、繰り返されるのは大量のプリントの提出期限。
もともとそんなに成績も悪くない私が補習を受けているのは、もちろん自主的に参加したからで、それにはちゃんと理由がある。
会えるのだ、学校に来れば。
彼に向日に。
右手をひたすらにプリントに走らせ、視線はばっちり窓の外。
先生も文句は言わない。
プリントはきちんとやっているし、そもそも補習を受けなくていい生徒だから。
だから私もそれに甘えてグラウンドから赤い頭を探す。
それはいとも簡単に見つかって、今日も何が楽しいのかぴょんぴょん跳ねて。
それがたまらなく、好き。
春に桜がつきもののように、
夏に海が定番のように、
私には向日の笑顔が当たり前の日常なのだ。
思わずプリントを走っていた手を止めて、彼を凝視した。
すると向日はこっちに気づいて校舎へと近寄って来る。
「おーい!名字ー!」
向日の声につられるように窓を開けると、むわっと夏特有の生暖かい風が頬を掠めた。
「頑張れよー!」
向日はただ一言そう言ってコートの中へと戻っていく。
秋は紅葉が風情なように、
冬に雪が降るように、
それは私にとって美しいと感じる出来事で。
窓を開けたまま必死に赤くなった顔を隠す。
(そんなの・・・反則・・・っっ)
夏休みの教室へ
今日もまた
彼を探すため
足を向けるのです